デジタルツインの活用
デジタルツインとは
第4次産業革命環境下の生産現場すなわちスマートファクトリーでは、モノのインターネット(IoT)によって、生産プロセス内の機械と製品が相互に通信しあい、効率的な生産という最終目標の達成が図られます。そのようなデジタル化の進展が特にメーカーの生産現場にいっそう複雑な課題をもたらします。この課題の解決策の一つにデジタルツインの活用が挙げられます。
デジタルツインは、製品、部品、システム、またはプロセスの仮想表現を提供するものです。デジタルツインを通して、仮想世界で確認することができます。特に、工場全体が現実世界で実行されるのと非常によく似た挙動が仮想世界で実行されるような工場全体のデジタルツインがあります。
どのように役立つのか
多くの相互作用を持つ大規模なシステムは、一般に分析が難しく、シミュレーションの伝統的な応用がさらに重要になります。シミュレーションは、各構成要素の相互作用と貢献度を客観的に評価し、連携して動作するシステムを設計し、そのシステムを調整して最適化できる唯一のツールになる可能性があります。シミュレーションを適切に活用することにより、システムを客観的に評価し、最適な構成と運用についての知見を得ることができます。
更に技術の進歩により、大量のデータの収集と共有が簡単に行われるようになり、モデルへの適用が容易になって、結果を予測するシナリオを評価できるようになりました。
実装に関するプロセス
有用なデジタルツインを実装するためには、以下の3段階のプロセスがあります。
- モデルを確立する:実物にデジタルデータを重ね合わせるだけでなく、3Dソフトウェアを使用して被写体をシミュレートします。その後、実物とモデルとの相互作用が行われ、関連するすべてのパラメータはモデルと通信します。データが与えられ、モデルは類似性を通じて、どのように動作するかを「学習」します。
- モデルをアクティブにする:シミュレーションを実行することにより、モデルは既知データと与えられたデータの双方に従って継続的に更新されます。履歴、他のモデル、接続されたデバイス、予測、コストなど、他のソースから情報を取得することで、リスクと信頼水準に関連した知見を提供するために、オプション順にシナリオが実行されます。
- モデルから学習する:結果として得られた解決案を使用して、使用率やコスト、パフォーマンスの面で最適な結果を達成するため計画を実施し、潜在的な問題領域や不採算の状況を回避することができます。
また、デジタルツインを構築することにより、次のような応用事例を挙げることができます。
- 設備は自身の状態を監視し、保全スケジュールを立て、必要に応じて交換部品を発注することができます。
- 混流生産を導入し、納期を遅らせることなく、機器の使用率を最大化するようなスケジュールを立てることができます。
- リソースが変更された場合の迅速なリスケジュールは、重要な納期に合わせて負荷を再最適化することで損失を削減できます。
現実での活用
スマートファクトリーのデジタル化されたコンポーネントシステムから収集したデータを使用し、離散型シミュレーションソフトウェアを用いて、生産ライン全体をシミュレートすることができます。在庫レベル、コンポーネント履歴、有効期限、輸送、ロジスティクスなどに関するリアルタイム情報をモデルに取り込むことができ、シミュレーションを通じてさまざまな計画やスケジュールを作成できます。さらに、潜在的な損失や中断を最小限に抑えながら、供給元または生産計画の代替案を相互に評価できます。
単純な品切れや機器の故障、大規模な自然災害など、変化が発生した場合、シミュレーションモデルは生産への影響と下流のサービスへの影響を表現することができます。その後、修正された行動方針を手動または自動で評価し、解決策を実行することができます。
第4次産業革命環境下でシミュレーションを使用してスケジュールを設定し、リスクを減らすことの利点には、一貫した生産を保証することが含まれます。そこでは、コストが管理され、品質はあらゆる状況下で維持されます。
スケジューリングを活用することで、高度なデータ駆動型(データドリブン)シミュレーションモデルは、デジタルツインの役割を果たすこともできます。下図は、シミュレーションモデルがスマートファクトリーの中核にどのように位置するかを示しています。すべての重要なサブシステムと通信し、計画とリアルタイムの実行情報を収集し、短期スケジュールを自動的に作成し、さらなるアクションのためにそのスケジュールの構成要素と結果を各サブシステムに配布することが可能となります。
図 デジタルツインによるスマートファクトリーの実現(テキストp.355 *)
Simioを活用したデータ駆動型のシミュレーションのモデリングやスケジューリングへの応用については、下記ページの「Simioシミュレーションソフトウェアの特長」の項で紹介しています。
(*)『Simioとシミュレーション ―モデリング・解析・応用―』第1(第6版)第12章「インダストリー4.0におけるシミュレーションによるスケジューリング」
シミュレーション分析にご興味をお持ちの方へ
シミュレーションソフトウェア「Simio」における分析は近年では全世界で活用されており、システムの改善や設計に役立てられています。
当技術士事務所では研究実績豊富なメンバーによるSimioのセミナーから、シミュレーションモデル製作及び分析の受託まで、Simioに関連する事業を幅広く請負っております。
ご興味をお持ちの方は是非下記のお問い合わせから一度お問い合わせください。
コメント